約束
 でも、彼に夢をかなえて欲しいから。後悔をしないでほしいと思うからそんな気持ちをできるだけ抱かないようにしようと決めた。彼が私のことを気にして、あまり好きでないメールを良く送ってくれるのも分かるから。

 だから今はこのささやかな幸せを満喫しようと思った。

 そのとき、私の携帯にメールが届く。確認すると木原君からの返事だった。私の顔が思わずにやける。

「どうかしたの?」

「帰ってきたら遊びに行こうって。だから、行きたい場所があれば考えておいてって」

 私の返事に百合は目を細めていた。

 一つずつはとても細やかで、明日には記憶の片隅に追いやられることもあるかもしれない。

 でも、そんな日常のささやかな約束の積み重ねが、未来への足掛かりとなってくれる、と。
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