約束
 彼は私と目が合うと、昔と変わらない笑顔を浮かべる。そんな彼に対する気持ちは不思議と数年前と変わらなかった。かわらないという言葉が的確でないかもしれない。数年前に比べ、穏やかなものへと変化をしていた。

「久しぶり」

 私の言葉に木原君は笑顔で応える。

 そして、駅を出ると駐車場で止まっていた車のドアを開ける。私が後部差席に、木原君が助手席に乗り込むと、車がゆっくりと走りだす。

「野村さんはその前の電車?」

「昨日は実家にとまった。これで電車に乗るのは嫌だなって思ってさ」

 晴実の言葉に苦笑いを浮かべる。
< 538 / 546 >

この作品をシェア

pagetop