約束
 私はなぜか私の手にすっぽりと収まったブーケを見て、苦笑いを浮かべる。百合の友達の中で恋人がいるのが私だけだからかもしれないけど。

「百合にしてはがんばったよね。挙式さえも嫌がっていたくらいだから。あんなに綺麗なんだから普段からお洒落をしたらいいのに。贅沢なんだから」

 彼女にはあまり目立ちたいとか、彩りたいという気持ちはないみたい。でも、逆に飾り気のなさが彼女の美しさをより際立たせると思う。それは晴実にも言えることだと思うけれど。

 しばらく車が走ると、見慣れた景色が私の視界に飛び込んでくる。そして、運転をしてくれている野木君に声をかけた。

「この辺でいいよ」

 彼はこの後、晴実を家まで送るらしい。そうなると、ここでおりたほうが彼女の家に行くには便利だったからだ。

 彼は車を止めると、私達を送り出してくれた。

「夜、電話してから行くよ」
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