約束
 木原君は野木君にそう告げる。

 野木君は分かったと言い車を走らせ去っていく。


 本当は直接野木君の家にいったほうがいろいろと便利なんだろうけど、私の親が木原君に会いたがったのでそういうことになったのだ。

 姉は結婚し、家を出ていた。今日は木原君に会うために家に帰ってくるらしい。

 相変わらず私の家族は木原君のことが大好きで、木原君が来るという話をしたとき、親には泊まっていけばいいと言っていたのだ。野木君の家に泊まると聞いた時はなんだかさみしそうだった。

 そのとき、私の視界に艶やかな桜が映る。そこは、女の子のぬいぐるみを捜した公園であり、高校の通学路になっているため、彼との学校帰りに何度も通った。

 その公園を囲むように咲く桜の花びらが舞い落ち、私の頬に触れた。
< 543 / 546 >

この作品をシェア

pagetop