約束
 それ以上、彼を見ているのが苦しくて目をそらす。

彼の後をついていくように部屋を出て、階段を下ることにした。

 だが、その足取りも玄関先で止まる。

そこには両親に見送られ、家を後にしようとする木原君の両親の姿があったのだ。

二人は目が合うと、私に深々と頭を下げる。

 並んでいた二人が顔を合わせ、木原君のお母さんが一歩踏み出し、私達との距離を狭めた。

「本当に迷惑をかけてしまってごめんなさいね」

 艶のある落ち着いた声。長い髪の毛を後ろで一つに縛り、ファンデーションと口紅といった簡単な化粧しかしていないだけなのにものすごく綺麗だった。

洋服も黒のジャケットにブラウンのスカートというすごくシンプルなのに、上品で落ち着いた雰囲気があった。

彼女が笑うと辺りの雰囲気が和やかになる。


 木原君のお母さんということは私の母親と同世代か、少ししたなのだろうが、年を感じさせなかった。それどころか姉との年のほうが近いのではないかと思ってしまうほどだった。

「そんなことないです」
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