約束
 ベッドに入るといつもはすぐに寝入ることができるのに、その日の夜はどこか格別だった。

辺りをひんやりとした空気がさまよい、頬や髪を撫でていく。

 何度目かの寝返りを打った時、私は身体を起こした。ベランダにほのかに漂う光を見つけたためだ。

その光の漏れ具合と場所から、木原君の部屋だと分かる。

 枕元においていた携帯に手を伸ばすと、時刻は零時を回っている。

 こんな遅くまで何をしているんだろう。勉強をしているんだろうか。

それとも、パソコンとかも持っていたけど、そういうのを触っているのかな。


 彼の瞳には何が映って、何を考えているんだろう。彼のことがほんの少しでも知りたくてたまらなかった。

 ただ今の私に分かるのは、少なくとも彼にとって私がその他大勢のうちの一人ではなくなったんだということだけだった。
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