約束
第四章 彼の優しさ
 心の奥が温かいもので満たされ、その感触に酔いしれている時、あまり聞きなれない声が響いていた。ものごとがはっきりしない状態で、目を開けたとき、思わず体を起こしていた。そこには茶色の髪の毛をした男性の姿がある。

 彼は目が合うと、苦笑いを浮かべていた。

「勝手に部屋に入ってごめん」

 私に彼の言葉に反応する余裕はなかった。

 だいたいなぜ彼がここにいるのだろう。

 いつも私を起こすのは朝が早い姉だったはず。

「君のお姉さんに起こして欲しいって頼まれたから。勝手に入るのも悪いと思ったんだけど」

「気にしないで。私が寝坊したのが悪いんだから」

 やっと心臓が落ち着きを取り戻し、胸にかけた毛布にかける力を緩めようとしたとき、パジャマ姿でいることに気づいた。そんな姿を見られたくなくて、毛布を胸元まで手繰り寄せる。

「着替えて下に行くから」


 木原君は笑顔を浮かべると、私の部屋を出て行った。

 彼が出て行ってほっと息を吐く。おきてからしばし抱きしめていた布団を手放す。
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