約束
 ご機嫌そうな声が背後から聞こえてきた。振り返ると、そこには姉が立っていた。

「何で木原君を私の部屋に遣すのよ」

 リビングにいるらしい木原君には聞こえないように小声で囁く。姉はにやっと微笑む。

「妹のささやかな恋心を叶えてあげようとしただけだよ。話すきっかけを与えたんだから、むしろ感謝してほしいくらい」

 どうして寝起きの私の部屋に木原君を連れてくることが恋を助ける手助けになるのか分からないんだけど。

 とりあえず、今までのやり取りから姉にこんなことを言ってもムダということだけは分かった。明日からは誰にも起こされずに、少なくとも木原君よりは早く目覚めようと誓う。

「でも、寝言で木原君の名前を呼んだらダメじゃない」

「え?」

「部屋の外からノックして起こそうとしたら、呼ばれたから中に入ったんだってね。おきていると思ってベッドのところまで行ったら、眠っていてびっくりしたと言っていたよ」
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