約束
 拍子抜けして、そのまま出て行こうとしたときだった。

「学校に行くなら、木原君と一緒に行けば? まだ学校への道、分からないんじゃない?」

 その言葉を聴いて、我に返った。思わず改めて木原君の顔を見る。木原君がその言葉に苦笑いを浮かべていた。

「一度じゃ記憶力良くないと学校へ行く道とか覚えられないと思うよ」

 私は肝心なことを忘れていた。私にとっては通いなれた道でも、彼にとっては見ず知らずの道なのだ。

「大丈夫ですよ。そんなにややこしい道じゃないと思いますから」

 木原君は笑顔でそう言う。もう食べ終わったのか立ち上がっていた。食器を持とうとすると、母親に「いいから、学校に行きなさい」と言われていた。
< 87 / 546 >

この作品をシェア

pagetop