ハゲ天使【被害妄想彼氏 番外編】
「まあ、人それぞれの考え方があるよ。」
そう言ったのは、同じクラスの前川智也くん。
真知子の弟で、大和の良きライバル。
よく家に遊びに来るので仲良くなってしまった。
今は授業中。隣の席なので、こっそりおしゃべりをする。
「それは分かってるんだけど…」
私は教科書を開いて立て、アゴをのせた。
「俺も、修司さんがお兄さんになってくれたら嬉しいけど!」
智也くんも、大和と同じ気持ちなんだ…。
「椿ちゃんは、嬉しく…ない?」
智也くんは心配そうに私を見た。
「分かんない…けど、修司お兄ちゃんには、幸せになってほしい…」
そう言うと、智也くんは笑った。
「それなら、問題ないじゃん」
「でも、なんか…やりきれない気持ち。
…私、子供なのかなあ…」
「まだ12歳なんだから、子供でいいじゃん」
智也くんはケラケラと笑った。
私は、大和みたいに素直に喜べないことに、
変なもどかしさを感じているのかも知れない。
真知子の事だって、正直…別に嫌いじゃない。
もんもんと考えてると、その日の授業は終わっていった。