秘密と生きる君
「部活入りたいならサッカー部に入れよ!俺が1から教えてやるからさ!」
俺と愁の会話を聞いていたのか、悠馬がアキの弁当のおかずを盗りながら言った。
「あ!俺のおかず〜!」
いきなり隣から伸びてきた箸に自分のおかずを盗られたアキはまた悠馬を睨んだ。
その光景を見ながら愁は淡々と食事を進めていた。
「サッカー部かぁ。考えとくよ」
ご飯を口に運びながら俺は答えた。
実を言うと、俺は部活が好きじゃなかった。
上下関係というものがどうしても苦手だったからだ。
運動はもとから好きだから部活に入りたい。
しかし、どうしても上下関係があるということが邪魔してこれまで部活に入ったことがなかった。
4人で話をしながら食べた弁当は美味しかった。
そして楽しかった。
「さて、俺たちはそろそろ行くかな。次、移動教室だったよな?」
「そうだ」
悠馬は立ち上がりながら愁に尋ねた。
愁は短く答えながら弁当を片していた。
「じゃーな〜!ハル!これからよろしくな!」
「おぅ。またな」
悠馬が大きく手を振りながら歩いて行った。
愁が少し、後ろを振り向いて悠馬の後を歩いて行った。
あれは、無言の『よろしく』だったのかな?
常にテンションの高い悠馬。
あまり喋らない愁。
友達ができたことが嬉しくて、思わず笑みを溢した。