エンターテイナーズ
「やだ!!もうこんな時間じゃない!」
しばらく歌の余韻に浸っていると、
時計を見た江上さんが小さく叫んだ。
「どうかしたんか?」
「12時までに社長室に珠季さんを連れてくるように言われてたの!
あと5分しかないわ!」
「え!?そうだったんですか?
すいません、のんびりしちゃって…」
「あぁ、珠季さんはいいんですよ!
こちらの段取りミスです。
じゃぁ、もう行きましょうか」
「はい」
あわただしく荷物を持っていく江上さんに付いてドアへ向かう。
「あ、そういえば2人とも!
後の3人はどうしたの?」
不意に振り返った江上さんの問いかけは、
私の背後にいる2人へのものだった。
「あいつらやったら、まだスチール撮ってんでー。
何や、オーディションらしいわ」
「あぁ、映画のね?」
「そ。俺らはもう終わってん。
あいつら、この場におれんかってかわいそうやな〜!」
キシシ、と笑う馨の声を聞きながらドアを開けた。
他のHANDS.のメンバー、会ってみたかったな。
―バタン
ドアを閉めるときに見えたブルーグレーの瞳は、
優しい弧を描いていた。