カニバリズム
序章
「何で君はそう思うんだい、カニバリズム。
人なんて汚い生き物ではないか。
自分の事しか考えない愚かな生き物、それが人ではないのか?
そうだ面白い話をしようか。
私が道を歩いていると、綺麗な女性が自転車で歩道から道路に出ようとしていた。
その時、女性は安全確認もせずに道路に出た為に、後ろから自転車に乗って来ていたお爺さんは危うくぶつかりそうになった。
しかし、女性はそんなこともわからず、そのままフラフラとタイツか靴下を片手で直しながら道路の真ん中を走り始めた。
お爺さんは急いでいたらしいのだが、女性が右へ左へフラフラと走っているため抜かすに抜かせずにいた。やっと左のほうに抜かせるだけの間が出来たから、お爺さんはそこを通り抜けようとして女性と横一列に並んだ時、初めて女性は後ろを振り返った。
何故だと思う?
車が来てないか確かめたのさ。
お爺さんが左にいるために女性は道路の真ん中を走る形になったから、自分の身を案じて後ろを向いた。
今まで、いきなり道路に出てお爺さんを困らせ、フラフラと走りお爺さんや皆を困らせたのに、一回も後ろを振り向かなかった女性は自分の為だけに後ろを振り向いた。
< 1 / 9 >

この作品をシェア

pagetop