多目的ルームに住む僕ら
1ヶ月たっても、ユリは自分の事を話さなかった。
思い出せないのか、思い出さないのか…新しい家も探さないユリを、俺は理解出来ないままでいた。
それでもユリが家で待ってると思うと、何故かほっとした。
ところが、2ヶ月たったある日、俺か買ってあげた洋服もいつしかカラーボックスがいっぱいになった頃。
家に帰るとユリの姿がなかった。
「ユリ…?」
今まで一度も家にいなかった事がなかったから、俺は焦った。
アイツに行く所なんかあるんだろうか。
いや、そもそも俺が仕事に行ってる間にも本当はどこかに行っていたかもしれない。
でも、どこに?
―思い出すまで―――
ユリは何かを思い出したのか。だからもう、ココにいる必要がなくなったのか。
「なんだよ。」
俺は床に座り込んだ。
それならいいんだ。
アイツが帰るべき場所に帰ったなら、それでいい。
それで良かったんだ。