多目的ルームに住む僕ら
「ハァッハァッ…―!」
くそっ!
こんな事なら、1万くらい多く出して坂の下のアパートにすりゃ良かった!
心の中で俺は叫びながら坂道を駆け上がる。
就職してからろくに運動をしていないせいか、かなり息が上がってしまう。
喉が痛いくらいの冬の冷たい空気でも、吸い込まないよりマシだ。
短く、でも思い切り酸素を肺へ送る。
やっと辿り着いたのは、もちろん自分の住むアパート。
唯一の救いは、部屋が一階だという事。
部屋の電気を確認するや否や、息切れしながらも握り締めていたキーケースから一番でかいモノを選ぶ。
ガチャガチャッ―
荒々しくカギを差し込んで勢いよく玄関の扉を開ける。
その俺の目に飛び込んで来たのは…………、
紛れもなくユリだった。
「タロー遅い〜。」