フィガロの恋 【ペナルティー作品】

その日も素晴らしい青空だった。
フィガロとスザンナは、飽きもせずテシュプ川の川辺で朝から小鳥を眺めたり、スザンナの作ってきたお弁当を食べたり、たわいもない話をしては密かにクスクスと笑いあったりして、二人の休日を過ごしていた。
少し遊びつかれた二人は、タヌキ岩で寄り添いながら、黙って川のせせらぎと風が草を鳴らす音に耳を澄ませながら、思い出したかのように初々しいキスを交わした。
二人がそうしていると、ハトのオルトリンデが二人の正面に舞い降りてきた。
「ん？今日は手紙を持ってないな。だったらお前ものんびりしてな」
フィガロはオルトリンデを一瞥すると、両手でスザンナの顔を包み込んでキスをした。
「駄目よ、オルトリンデが見てるわ」
スザンナは優しいキスを受けてくすぐったそうに笑った。
「俺達のキスをみんなに見せたいよ」
「バカッ。何を言ってるのよ」
「俺の言ってる意味、わからない？」
「どういうこと？」
「プロポーズしてるんだよ。教会で、みんなの前でキスしようってさ」
「フィガロ・・・」
指先が恋人の顔をなで、唇が唇を求めた。オルトリンデは人間の戯れを見つめながら「ポッポー」とひとつ鳴くと、翼を広げて空へ舞い上がった。



　　　　おわり