【短編】焼却炉

…焼却炉のフタに何か書いてある。


「ちょっと、あんたどいて」


どん。


軽く押したつもりではあったけど京子はあっさりとはじき飛ばされ尻餅をつく。


「なによこれ」


焼却炉の、ゴミ箱のような押し開けるタイプのフタにはよくわからない字で何やら書かれているが判別はつかない。


けれど形で判断するなら、こう読める。


「『死ね』」


背後から、そんな言葉を連れ添って衝撃が美香を押す。


美香はそのまま燃え盛る焼却炉の中へと吸い込まれていった。


憐れにも、灼熱地獄の中で美香は救いの叫びを上げるが周りに人はいない。


それにゴゥゴゥと焼却炉の音が叫びをかき消すなど造作もないこと。


……。


京子は笑みを浮かべる。


そして再び呟き始めた。


「十、十、十…」と。








< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:1

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

群青
煌々/著

総文字数/23,408

ミステリー・サスペンス62ページ

表紙を見る
将棋少女
煌々/著

総文字数/19,108

青春・友情51ページ

表紙を見る
【短編】俺と鬼畜でカワイイかまいたち
煌々/著

総文字数/18,655

その他36ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop