嘘日記〜私の日常〜
お礼を言おうと、顔をあげた。

そこには、半身水に浸かった、美人さんがいた。

髪は緑で、瞳は青。

(日本人じゃ、ない?)

それどころか、人間で無かった。

水に浸かった半身が、魚である事に気付いて驚く。

呆然と見とれていた私に、恩人は、にっこりと微笑んだ。

「大丈夫?どうして此処に?」

問いに素直に答えを返す。

「魚を買いに…」

バチーン☆

目の前に☆が散った。

数瞬遅れて、人魚に叩かれた事を悟る。

「最低!そんな人とは思わなかった!」

人魚の剣幕に恐れをなし、私は逃げ出した。

そして、草原の中に不自然にたつ、新緑の扉に気付いた。

来た時と場所が違ったが、かまわず扉を開けて駆け込む。

…と、そこはスーパーの裏、トイレの扉の前。

(戻った?)

周りを見回す。

トイレの隣に、あの新緑の扉は無かった。

ペタペタと触ってみたが、ただの壁。

狐に化かされたような気分で、その場を後に、売り場に戻る。
魚売り場には、魚が置かれていた。

新鮮な切り身や、丸ごとの魚が、氷の上に整然と並ぶ。

(さっきは無かったのに)
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