【続】ギャップ的恋愛論
なんとかブーツをはき終えて外に出たあたしを待っていたのは、カギを器用に指で回してる怜二で。
その涼しい顔にひと言文句でも言ってやろうとあたしが口を開きかけたところで、
「エレベーターのボタン、押してきて」
何食わぬ顔でそう言ってくるから、あたしはただコクリと頷いてボタンを押しに行った。
………っていうか、あたしってばやっぱり従順なペット並?
「やっぱ、夜は寒いな……」
「そうだね……」
エレベーターを待つ間、すっかり日が沈んで煌々と明かりが灯る町並みを、2人並んで見下ろす。
ホント……綺麗……
ウチのマンションからも夜景は綺麗に見えるけれど、ここからはさらに遠くまで見える気がして、うっとり見惚れていると、
いつの間にかやってきたエレベーターのドアが、静かな音を立てて開いた。
「ほら、乗るぞ」
怜二に手を引かれて乗り込んだエレベーターの中は、きっと夜のお仕事をしているであろう住人の残り香が漂っていて、ちょっぴり切ない気持になる。
怜二もこういう香水付けて、いつかはホストの世界に飛び込むのかな……?
本人にはその気がないらしいけど、凌ちゃんはかなり頑固者だから、このままじゃきっと強引に勧誘されそうな気がする……
「ねぇ、今のバイト、いつ辞める気でいるの?」
気付いたら、またあの質問をしていた。
途端に渋い表情になる怜二の顔を見て、あたしは慌てて言葉をつなげる。
「んっと…ほら、クリスマスとか何かと繁盛期でしょ? あたしと会う暇できるのかなぁって………」
………我ながら、苦しい言い訳だけど。
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