【続】ギャップ的恋愛論
「話というのは、他ならぬ乙葉のことなんだが……」
ほらきた。
「俺は別れる気は…」
「まあ、待て。話す前からそういきり立つなよ。
別に無理矢理別れさせるような無粋な真似はしねぇよ、俺は」
喉の奥でクッと笑った凌さんは、そう言ってカップに口をつけた。
その仕種は男の俺から見ても魅力的で、もうしばらくはコイツに勝てないと軽く打ちのめされた気がしながら、俺は再び口をつぐんだ。
「今日はお前の意気込みを確認したいだけだ」
「……どういう、意味ですか?」
「俺から……、いや、アイツの父親である柾から、乙葉を奪い取る覚悟があるかと聞いてるんだよ」
「奪い取るって……」
その生涯を添い遂げる気があるかどうかのような質問に面食らった俺は、しばらく凌さんのカップを呆然として見つめていたが、
「……なんだよ。ないのかよ……」
そうため息混じりに言われてはっと我に返った。
「残念だ、俺はお前を買い被りし過ぎて…」
「あります。相手が誰であろうと奪い取ります」
俺は気づけば、凌さんの言葉を遮ってまで、低く唸るように宣言していた。
「ほう…、言ったな?小僧」
その時、凌さんの目がキラリと鈍く光ったのに気づいたが、もう後には引けないと、俺も頑として凌さんを睨み返した。
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