【続】ギャップ的恋愛論
ニヤリと笑う凌さんに、俺は曖昧に笑みを作ってみせた。
「ははは…、そうですね…」
ロマンチックって言われても、全然ピンとこねぇけど。
クリスマスとか、俺もあんまり興味沸かねぇ……あっ!
だけどあることに気づいて、自分の顔が強張っていく。
「クリスマスにって……、だから柾さんは急いで家に…」
「そういうこった。結局クリスマスに間に合わなかったどころか、“幸福を呼ぶ靴”も粉々に砕け散ってしまったがな……」
「………」
乙葉の幸福を願うあまり自分が死んでしまうなんて……
やっぱり呉林家には残酷だよ、サンタは。
柾さんの無念さを考えると、そのジンクスさえも残酷なものに感じて、俺は何も言えなくなって俯いた。
代わりに口を開いたのは、長い足を組み直した凌さんだった。
「……そこでだ、お前に一つ提案がある」
その言葉にゆっくり顔を上げると、何か企んでるような視線とぶつかった。
「さっき言ったよな?柾から乙葉を奪うって」
「……言いましたけど…」
あー…なんか先が読めてきたぞ。
『代わりにお前がコレを乙葉に渡せ』とか言い出すんじゃ…
「柾の代わりに、お前が乙葉にコレを渡せ。そうすれば、快く柾の墓に乙葉を奪われたって報告してやるよ」
………やっぱり。
っていうか、
「普通に考えて…ムリ、でしょ」
「なんだと?」
俺を見据える凌さんの目が、鋭く光った気がした。
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