【続】ギャップ的恋愛論
3階にある自分達の教室まで着くと、
「大事な話があるからさ、荷物だけ置いてちょっといい?」
それだけ言って、乙葉は自分の席へと向かった。
俺も教卓前の席へと鞄を置き、とりあえず座ってみる。
ここの席、大体の奴が嫌がる場所だから、例えクジで違う場所を引こうとも、ひと言お願いすれば、ほとんどの奴が快く変わってくれる。
おかげで俺は、入学してからずっとこの席をキープしてるんだけど。
皆知らないんだろうか?
この場所が一番目立たずに昼寝できるってことを。
“灯台もと暗し”って言葉があるだろ?
まさにそれ。
教卓からは、教科書さえ広げておけば、かなり勉強に励んでるように見える魔法の場所なのによ。
まあ今さら気付かれたところで、俺にはこの場所を譲る気は毛頭ねぇけど。
「お待たせ!」
頬杖ついてぼんやりしていた俺の肩を、勢いよく叩いた乙葉。
「ほらっ、担任が来る前に行こう」
有無を言わせず俺の腕を掴んで、さっさと教室から出て行こうとしている。
「おっ!ギャップカップル復縁か!?」
そんな俺達の様子に気づいたクラスの奴から冷やかしの声が上がるも、乙葉はひるむことなく教室を抜け出した。
ギャップカップル―――
なんとも寒いネーミングだけど、
見た目がケバい乙葉と、
見た目がキモい俺は、
2人の本当の姿を知らない奴からすれば、そうとしか例えようのないほど不釣り合いなんだよな。
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