【続】ギャップ的恋愛論
あたしがここまで狼狽えるのにはワケがある。
それはこの店のオーナー代理である凌ちゃんに、キツく言い渡されているから。
『もしウチの商品(店員)の人気に傷を付けるようなマネをしたら、乙葉だろうと出入禁止にするからな』
このことは当然怜二も知っていて、店内では必要以上に接触しないようお互い心掛けてきた。
……はずだったのに。
「あー-…」
“ね?わかったでしょ?”
あたしの訴えにようやく気づいたらしい怜二は、周りにチラリと視線を走らせて、またあたしの方へと向いた。
そして、
「あんなのほっとけ……」
と、ひと言。
当然解放されると思い込んでいたあたしは、怜二の言葉にピキッと固まってしまう。
いやいやいや、
あたしが出入禁止になっちゃうから!
そんなの困るから!
「それより、なんだよコレ。ちゃんと説明しろ」
「………」
言いたくない。
知られたくない。
ちゃんと料理だって出来る奴だって思われたい。
「乙葉?」
………くそぉ、ずるいよ、怜二。
そんな優しい顔するから、あたしのちっぽけな乙女心が折れちゃったじゃん……
「……あ、あのね」
「コラコラ、いつまでひっついてんだ」
ようやく口を開いたあたしを遮ったのは、またもやぬっと現れた郷野さんで。
「他の客が見てる前でイチャつくな。時給減らすぞ」
あたしと怜二の間に無理矢理体をねじ込みながら、舌打ちをした怜二の背中を強制的にホールの方へと押しやった。
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