後向きの向日葵
向日葵のメッセージ
屋外に置かれた小さなカートには、色とりどりのガラス玉が並んでいた。
見惚れる私の耳元では、ほぼ同じ音域の声が沸く。
「わぁ!綺麗だねぇ・・・。」
「ねぇ、ちょっとちょっとぉ。これなんか、素敵じゃなーい?」
話題を振られた私はむしろ、喜ぶ彼女の表情に向かって、「そうだね。」と応えてしまう。
陽射しは優しい。制服の黒い色でさえ、重たく感じられないくらいだ。
私は今日、見知らぬ土地に来ていた。
そして、今こそは待ちに待っていた、修学旅行の自由行動だ。
暫くの間、500円もしない商品のウィンドウショッピングに耽る学生たち。
売り子さんはと言えば話題にすることのみを楽しむ、ちょっぴりしたたかな私たちの戯れを邪険にはしなかった。彼はどうも、自分の作品に注がれるはつらつとした、輝きの日光浴を楽しんでいたらしい。
ふいに私の傍で、風がそっと揺れた。
「ああ、富永さん!富永さんも、おいでよ~!」
誰かが好意を込めて呼び止めたが、その風は早くも過ぎ去ろうとしていた。
と、み、な、が・・・?!
私は、色彩の世界から我に返った。
富永雨夜(とみながあまよ)!
ガラス玉を置いた私は、とっさに駆け出していた。
気がつくともう彼女は一人、ずっと遠くに向かっているのだ。
足に自信は無いけれど、私は、力精一杯に駆け出した。
「雨ちゃん!」「雨ちゃんっっ!」
何も焦ることはないはずのシチュエーションなのに、私はどうして、富永雨夜をこんなにも熱く目指しているのだろう。
『だけど、今・・・、今、声をかけずして何時、私は彼女に声をかけるの?』
気がつくと雨ちゃんは山門を抜けた、人気のない池の前で足を止めていた。
植物に向かって、一人で、対話をしていた。
決して、暗い風景ではなかったが、どこか、それは厭世的でもあった。
私は、雨ちゃんらしい場面だと思った。
ようやく声の届く距離まで辿り着いた時、もう一度、私は慣れ親しんだ名前を叫んだ。
「雨ちゃんっっ!」
そして、雨ちゃんが振り向いた。
“なぁんだぁ。もう、安心してもいいんだぁ・・・!”
再び、訳のわからないことを思う私がいる。
次の瞬間にその世界は、真っ白な光に包まれた。
???
見惚れる私の耳元では、ほぼ同じ音域の声が沸く。
「わぁ!綺麗だねぇ・・・。」
「ねぇ、ちょっとちょっとぉ。これなんか、素敵じゃなーい?」
話題を振られた私はむしろ、喜ぶ彼女の表情に向かって、「そうだね。」と応えてしまう。
陽射しは優しい。制服の黒い色でさえ、重たく感じられないくらいだ。
私は今日、見知らぬ土地に来ていた。
そして、今こそは待ちに待っていた、修学旅行の自由行動だ。
暫くの間、500円もしない商品のウィンドウショッピングに耽る学生たち。
売り子さんはと言えば話題にすることのみを楽しむ、ちょっぴりしたたかな私たちの戯れを邪険にはしなかった。彼はどうも、自分の作品に注がれるはつらつとした、輝きの日光浴を楽しんでいたらしい。
ふいに私の傍で、風がそっと揺れた。
「ああ、富永さん!富永さんも、おいでよ~!」
誰かが好意を込めて呼び止めたが、その風は早くも過ぎ去ろうとしていた。
と、み、な、が・・・?!
私は、色彩の世界から我に返った。
富永雨夜(とみながあまよ)!
ガラス玉を置いた私は、とっさに駆け出していた。
気がつくともう彼女は一人、ずっと遠くに向かっているのだ。
足に自信は無いけれど、私は、力精一杯に駆け出した。
「雨ちゃん!」「雨ちゃんっっ!」
何も焦ることはないはずのシチュエーションなのに、私はどうして、富永雨夜をこんなにも熱く目指しているのだろう。
『だけど、今・・・、今、声をかけずして何時、私は彼女に声をかけるの?』
気がつくと雨ちゃんは山門を抜けた、人気のない池の前で足を止めていた。
植物に向かって、一人で、対話をしていた。
決して、暗い風景ではなかったが、どこか、それは厭世的でもあった。
私は、雨ちゃんらしい場面だと思った。
ようやく声の届く距離まで辿り着いた時、もう一度、私は慣れ親しんだ名前を叫んだ。
「雨ちゃんっっ!」
そして、雨ちゃんが振り向いた。
“なぁんだぁ。もう、安心してもいいんだぁ・・・!”
再び、訳のわからないことを思う私がいる。
次の瞬間にその世界は、真っ白な光に包まれた。
???