後向きの向日葵
「それが、マルチとかねずみ講の類よ!」
本題が始まると友人は、開口一番に叫んでくれた。
「その商品をあなたがいいと思って、その人から商品を買うのはともかく、その連鎖方式には問題点もあるのよ。」
「それにね、実際に左団扇の生活をするのは、上層のごくごく僅かなメンバーだけ。」
「その先輩のようないわゆる末端のメンバーはたいてい、ノルマ達成のための自己負担で手一杯のはずよ。」
彼女は、私の中でもう一歩繋ぎようのなかった、点在の情報を見事に連結させてくれた。

次に、こうもつけ加えた。
「たぶん、その万に一つの可能性を10に一つの可能性くらいにして、その先輩は、誰かによって紹介されちゃったんじゃないのかしら?」
先輩の浮かれ具合を見ても、それは明らかなことだった。
その上、私は思い出したのだ。
先輩の同級生だった菱田さんの家において、必要以上の、違和感を参加者に打ち消したものがあったことを!
あの日、菱田さんは自宅に一人・・・ではなかったのだ。

ぞろぞろと招かれた子たちが靴を脱いで、手間取っている合間に茶の間から、突然、菱田さんのお母さんが娘に向かって声をかけたのだ。
「美樹子。二階の諸岡さんと皆さんと・・・、お茶をお出ししてあげなさい。」
一瞬、キッチンに消えた菱田さんは親子揃って、諸岡さんへの好意を口にしながら、グラスを乗せた盆を手早く受け取って、皆の下へと戻って来たのだった。
つまりは諸岡さんという存在についてはどこか、同級生の母親公認という雰囲気さえあったのだ。
< 11 / 40 >

この作品をシェア

pagetop