後向きの向日葵
特にモリ先輩と同学年の女性たちにとっては、ついこの間まで、学校で顔を合わせていたこの女性は、“同級生のお母さん”以外の何者でもなかったことだろう。
明らかに意地悪な近所のおばさんとは違って、「娘の、大事な友だちだから。」と自分を肯定してくれた立場の者が、まさか、危険を与えて来ることがあるとは考え難いものだ。ご近所文化の強調しがちな印象が、ここにおいて、絶妙に作用していたわけだった。
この場面に安心した先日までの雛たちが、この時ばかりは少なくなかったことだろう。

とはいえ、悪徳商法の風土が入り込んだのと同じく、それに関する知識が、相応に入り込む隙間も完全に封鎖されてはいなかった。

ぎりぎりのところに違和感を手放せず、商品を買わなかった者も多かったのだ。
今回、強いて言えばその時の女性陣よりも、知恵者との繋がりを欠きがちな、車好きの男性陣に被害が拡大することとなる。
彼らは、いわゆる男性にあたる、男性たちだったのだ。
そんな彼らをより良く突き動かしたのは、“男としては一度くらい、成功を手にしたい!”という、彼らの内に秘めていた思いだった。
この不全感を明確につけ込まれたケースが、先輩を中心にして生じた一連の出来事だった。
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