後向きの向日葵
ただ、この時の私はと言えばもう力ずくで、商品の、使用を制止することは止していた。
先輩との一件で私は、学習していたのだ。
事態を無理にでも変えようとすれば、かえって、それへの執着を招きかねないという点を。
そして、ノッコという人物がどんな子だったかについても、彼女との長いつき合いによって、先輩との関係性以上に感じ取っていたものがあった。
昔から、ノッコは自分を持つことが苦手だった。
ある種、緒方さんの行動に特徴づけられる感じの、交渉術との繋がりが、ノッコという個性にとっても大切だったのだ。
随分と彼女もまたテンションに、酷く、左右されて来た人でもあった。

だから、たぶん・・・。
今、緒方さんと離れることが出来たとしても、おそらく、第二の緒方さんに惹かれていくのだろう。
ノッコにおいても同じく商品を購入することが、交友関係を維持する手段になっていた・・・。
従って、平凡な人生を送る私に唯一出来たのは、一度、注意を促したそのことのみだった。
逆にチョウチョや緒方さんという人々は、この微妙な隙間に入り込むのが上手かった。
この隙間への侵入に成功している間の彼女たちは、同時に、自分たちの心に空いた隙間を意識しないでいられたのだ。――そういえばA子にも、そんなところがあった。――
商品という、媒体を通して躁(ハイ)という感情は、21歳前後の青さを順調に巡っていた。
< 17 / 40 >

この作品をシェア

pagetop