後向きの向日葵
気がつくと私は、布団の中にいた。
窓は、私の顔に陽射しを注いでいる。
私は、現実に戻っていた。
“なぁんだぁ、夢だったのか。”
やや、残念な気持ちと共に余韻をも楽しむ。そして一人、クスクスと笑う。
『久しぶりに雨ちゃんと、一緒にいた感じだー。』
その柔らかい風に浸りながら、私は、顔を洗い、服を着替え・・・と次々に朝の手順をこなしていく。
「今日はトーストだけじゃなくて、目玉焼きやサラダをつけるか♪」
手元のフライパンからは、徐々に良い香りが漂ってくる。
そして、朝の、ささやかなご馳走を前に座るのだが、この光景に贅沢な気分を味わうのが私だ。

ところで、今日は修学旅行・・・ではなく、とっても、平凡なある日の静かな朝で、私には、その日に見た夢だけがちょっとばかし特別なものだった。
だから、この休日を気持ちの赴くままに扱って、お得意の思慮に時間を与えることにした。
そう・・・。私が、目を閉じるとかすかに見えるのが向日葵、・・・あの、私たちを優しく照らす向日葵が、心にじわりと滲んで来るわけなんだ・・・。
しかも、その温もるステージというのは、少し前まで、私たちの暮らす世界でもあった。
もちろん、雨ちゃんも!それに雨ちゃん以外の、友だちたちもいたんだ。

皆、そこに生まれてそこで出会い、そして、そこに友情を大切に見出していた。
ただ、残念ながらこの滞在は皆にとって、永久ではなかっただけなんだ・・・。

とすれば、楽園が永遠ではないと知れる衝動、それは一体、何時の頃から始まり来るのだろう。
おそらくはどこかの隙間から、入り込んだに違いないのである。
それだけでもう充分であって後は加圧次第で、ひびとなった隙間はいかようにも裂けていく。
実は、これは悲しい、悲しい物語の始まり・・・。
それでも・・・、それでも、今日は会いに行こう!
向日葵のくれたメッセージに従って、雨ちゃんたちとの日々に向かって!
そして、もし・・・、あなたが似たような経験をして、その思いを孤独に浸す時には、どうぞ、このメッセージを捉えてみて下さい。

“あなただけではないよ・・・。”
“皆、皆どこかで苦しむのだよ。”ってね。
さて、思春期、青年期を舞台にして、これより物語りは始まります。
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