後向きの向日葵
当日、私の気は重かった。
私は、微妙に飲み会が苦手だった。
案の定、アップテンポに展開する雰囲気には、完全に圧され気味で、早くも、壁のキノコというか、酒瓶を回す地味な係に定着しようと画策していた。
ところが、男性陣の手際が良かった。従って私は、
『盛り上げ係にもならず、地味役もせず・・・、お役に立たずごめん。』
と、内心、訳のわからない感想を抱えていた。
飲み会の間、私に一度も話しかけることのなかった、穂積さんにはどこか怖い感じがして、
『自分のような地味なキャラクターにとって、参加するべき場所だったのだろうか・・・?』
と、私は、ひっそりと気負ってもいたのだった。

しかし、翌週になり、このどうしようもなく頼りない私に向かって、泣きついてきたのは雨ちゃんの方だったのだ。
聞けば、穂積さんに叱られたという。
先日の飲み会のことで、そうなったと言うのだ。
彼から雨ちゃんは、こう言われたらしい。
「ソラさんはよく動いていたのに、雨夜はずーっと座りっきり。それじゃ、駄目じゃないか。」
「少しはソラさんを見習って、気遣いを覚えた方がいい。」
それで、雨ちゃんは憤慨していたのだ。
他方、私は複雑な感情を味わった。
それが事実であるならばともかく、穂積さんの指摘には、まずもって矛盾があると思ったのだ。
それは、次の通りだ。

まず、私にとっては動こうとしたにも関わらず、実際には、ほぼ動けなかった・・・が正解だった。
むしろ、雨ちゃんはよく動いていたと思う。
強いて言えば、気遣いに悩んでいたのが私であって、それに囚われず、動作していたのは雨ちゃんの方だった。
しかし、明らかに穂積さんは雨ちゃんの側を、それとなく怠け者扱いしているのだ。
私にとってもこれは、腑に落ちない。
私は、雨ちゃんに向かって、私の感じている矛盾を知らせるしかなかった。
その度に雨ちゃんは、何度も、何度も、状況を話してくれた。
< 20 / 40 >

この作品をシェア

pagetop