後向きの向日葵
更に、別のタイミングで雨ちゃんは、或いはこんな話を切り出した。
最近、「雨が部屋の掃除をしない。困るなー。」と、穂積さんはしばしば、雨ちゃんを批判するようになったと言う。
その際に、その都度、カヤさんを引き合いに出すらしい。
「仕事が無くなるからとカヤさんは、嫌なことでも、一生懸命に頑張っているのに!」
「だのに雨は、なんだ?部屋の掃除も、出来ないで!」
だから、そのギャップというのは明らかに、穂積さんに対する雨ちゃんの抱える、不満感情の表出には違いなかった。

そして、雨ちゃんのする話から伝わって来る、穂積さんの台詞や様子からは、褒め称えられるカヤさんと共にこき下ろされる雨ちゃんの姿が、私にも、それは、それは痛い程に伝わって来るのだった。
もちろん、私にとってはカヤさんも、大事な友達だった。
だから、カヤさんを悪く言う雨ちゃんの様子も辛かったのだが、今、とりあえずはそう言うしかない、雨ちゃんの抱える、行き場の無い・・・、どうしようもない気持ちにはどこか共感するものがあった。

そして、同じだ!・・・と思った。
以前、飲み会の一件で穂積さんに弁護された自分と、批判を受けた雨ちゃんという構造が、私には今一度、カヤさんに私を置き換える形で思い起こされたのだ。
あの日、ついつい気配りを果たそうとしてしまう、どこか、宴会に馴染めない私を目敏く見つけ、当の穂積さんは、その点を何倍も何倍も評価していたのだ。
そして、よく動いてはいたけれど気配りに伴う、ある種の感情に無縁な様子の雨ちゃんには、いや・・・、雨ちゃんの気楽さに対してはその内面に酷く、冷たい感情を湛えている様子であったのだ。
穂積哲也という人物は一体、何を考えているのだろう・・・。
私は、頭を抱えた。
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