後向きの向日葵
私と雨ちゃんとは小学校以来の大親友で、週末の13時に待ち合わせてはたいてい、日が落ちるまで、お互いの家に居過ごしてしまうことが多く、お互いの帰り道を心配し合ったものだった。
他方、それぞれの趣味や目的には違いもあって、学年が上がり、お互い、違うグループに所属してからは、二人で、厳かに遊び合う時間の方が徐々に減少していく。
進路も異なったので学生を終える頃には、二人とも、それぞれの生活をこなすことに忙しくなっていた。

ところで、雨ちゃんが恋愛に忙しくなっていた頃、私は、学校のある先輩とよく遊ぶようになっていた。
この先輩、森山爽子という人は温厚なタイプで、その上、そこそこに人懐っこい性格だった。
彼女はよく、関心事をユニークに話してくれたので、気後れ気味な私にも接しやすかった。
やや垢抜け切れないところもあったが、そこは広く、男女共に好かれる人柄になっていた、・・・と思う。
しかし、そんな彼女を疎ましく思う者もいた。
先輩に媚を売るために漫画を借りておきながら、「貸してもらっても、チョー迷惑!」と憤慨するのは、A子のお約束だ。

森山ことモリ先輩の本はこのA子によって、折り目のつかない程度によく投げられていた。
モリ先輩の目の届かないところで、何度も・・・もう何度も宙を舞っていたのだ。
そして1週間後、A子は、「先輩、読みましたぁ!チョー面白かったですぅ!」と、目をキラキラさせて本を返すのだ。
もちろん、目を通しているはずもない。
ここをうまく彼女は、誤魔化すのだ。
当のA子はと言えば仕返しをしていたわけでもなく、ただ、行為を通して退屈を凌いでいたのだった。
それに一向に気づかず笑顔で本を貸し続ける、先輩の様子に耐え兼ねて、とうとう私はこう助言したのだった。
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