後向きの向日葵
1回目、2回目と問題なく過ぎたのだが、次に、アクシデントは起こったのだ。
3回目のお誘いにおいて彼女は、集団側から、ある条件を提示されることとなる。
「バーベキューがあることを周りには、是非とも内緒にして参加をして欲しい!」というのが、それだった。
どうも、伊田さんという、28歳の女性を入れずにレクリエーションを楽しみたいと言うのだ。
伊田さんにおいては実は、一種の前科があったのだ。
以前、離婚直後の状態にあった彼女を参加させた折、打ち上げで酔い倒れ、最後は皆、彼女をようやくの思いでタクシーに乗せたらしい。

その時の思いが未だ苦々しく残っているため、今回は、彼女を呼ばないという選択を下したのだった。
しかし、彼女だけを呼ばないとあれば、もちろん、本人はさぞかし面白くないことだろう。
それで仕方なく、絶対にバラさないことを大前提とした、仲間外れの企画となってしまったらしい。
ただ、そのわりにはつめが甘かった。
社内回覧で企画の通知を行ったものだから、前提も何も、あっという間に本人の知るところとなったのだ。
しかも、後でわかったことには今回のレクリエーションというのは特別で、ほぼ、20~30代の男性たちのみによる企画であったらしい。
更に、まさかのまさかである。
女子で呼ばれていたのは、どうしてなのか、ユムランだけだったのだ。

寝耳に水な点は本人にこそ最もであったが、何故か、彼女の参加が決まっていたという点だけが、非常に強調されて、言わば課内を一人歩きするに至ってしまう・・・。
ユムランにとってはもちろん、そこからが、地獄の始まりとなるわけだ。
課内に怪文書が巡ったこともあったのだが、何がどう伝わったのか、課内のあらゆる係から、彼女に対する嫌味が聞かれるようになったのだ。
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