後向きの向日葵

とにかく最悪だった・・・。
一方的にアイドル扱いをした男性たちでさえ、人間関係や権力構造が絡んだ途端に、彼女との縁を臭わす、僅かなものまで一気に否定し始めたのだ。
従って、ユムランが何も知らなかったことを、証言する者は誰もいなくなってしまった。
この時、彼女の中で密かに目覚めた女の孤独に対しては、彼女を崇めた者たちでさえも、非常に冷たい存在であったのだ・・・。
もしも、そうでなかったならばそれ以前に伊田さんも、下手な疎外感を味わわずに済んだことだろう。
時は、既に遅かった。

伊田さんはと言えばあちこちで、ユムランの、架空の仕打ちを訴えたのだ。
当然、それは同情に足る話であったため、ここぞとばかり、上司クラスまでもが彼女に味方したのだ。
「へー。湯村さんってさぁ～～、誰とでもなのぉ～～？」
もちろん、そんな事実はどこにもなかったし、予定でさえあるわけがなかった。
しかし、直に、確かに、ユムランはこう言われるのだ。
頑張っても頑張っても、仕事の成果は出ない。
単なる極悪人の贖いにしか映らない、彼女の努力に応える者はいなかった。
彼女は、そんな日々に嫌気が差した。
そして、休日の今日、彼女は、私の目の前にいるのだ。
ただし、明日だって、明後日だって、彼女の中に出勤の予定は無い。

「私、アイドルでなくていいのに・・・。」
ユムランは、力なく笑った。
エスカレートしていくしかなかった社内いじめは、いずれ、いじめの方から発覚することになるのだが、その時にはもう、肝心なユムラン自身にそこへ戻る気は無かった。