後向きの向日葵
「先輩、(A子さんには、)本を貸さない方がいいよ。」
その一言だけで何かを充分に察したのか、先輩は、A子の罠を上手くかわすようになった。
A子の性格そのものは変えられないし、この手の人を変えようとも思えない私は、被害者の消失に向かって安堵していた。
この時の事情を詳しく話せたのは、先輩と私が、学校を卒業してからのことだった。
「大事なものなんでしょ?」
やや悪戯気に駄目押しすると、私に向かって先輩は頷いた。
先輩とは学年が違ったにも関わらず、2年遅れで私が卒業してから、卒業旅行と称して遊園地に出掛けた。
平日、時期はずれの遊園地をほぼ貸切状態で楽しんだのだった。
人目が少ないと言えば、やることは一つである・・・。
私たちは好きな男の子の話を目一杯して、お互いの気持ちをくすぐり合って笑った。
それはまだまだ、具体性に欠ける恋愛談義だったが、二人にとってはこれで充分だった。
そのうちにモリ先輩の口からは車好きの、男の子たちの話が出るようになっていく。
女同士の飲み会に参加した先輩が、偶然、隣り合った集団と仲良くなったのだ。
彼らの中にはお目当ての人もいるらしく、マイペースな先輩も、徐々にお化粧が上手くなっていく。
片や、『先輩、頑張ってね~♪』と遠い位置から、快く見守ろうと思っていた私は、むしろ、襟元を掴まれて、この輪の中に引っ張りだされたのだった。
この時は「む・・・、むごい。」と思いつつ、だけど、これはこれで腹を括ってみたのだった。
その一言だけで何かを充分に察したのか、先輩は、A子の罠を上手くかわすようになった。
A子の性格そのものは変えられないし、この手の人を変えようとも思えない私は、被害者の消失に向かって安堵していた。
この時の事情を詳しく話せたのは、先輩と私が、学校を卒業してからのことだった。
「大事なものなんでしょ?」
やや悪戯気に駄目押しすると、私に向かって先輩は頷いた。
先輩とは学年が違ったにも関わらず、2年遅れで私が卒業してから、卒業旅行と称して遊園地に出掛けた。
平日、時期はずれの遊園地をほぼ貸切状態で楽しんだのだった。
人目が少ないと言えば、やることは一つである・・・。
私たちは好きな男の子の話を目一杯して、お互いの気持ちをくすぐり合って笑った。
それはまだまだ、具体性に欠ける恋愛談義だったが、二人にとってはこれで充分だった。
そのうちにモリ先輩の口からは車好きの、男の子たちの話が出るようになっていく。
女同士の飲み会に参加した先輩が、偶然、隣り合った集団と仲良くなったのだ。
彼らの中にはお目当ての人もいるらしく、マイペースな先輩も、徐々にお化粧が上手くなっていく。
片や、『先輩、頑張ってね~♪』と遠い位置から、快く見守ろうと思っていた私は、むしろ、襟元を掴まれて、この輪の中に引っ張りだされたのだった。
この時は「む・・・、むごい。」と思いつつ、だけど、これはこれで腹を括ってみたのだった。