後向きの向日葵
和気藹々と進んだ講習会は色彩そのものや、交友上に生まれる、魅力という余韻を残したままに終わった。
女の子同士の集う空間は繊細に賑やかで、そして、そのコミュニケーションはくすぐったかった。
私も香水の試し合いは、純粋に楽しめたと思う。
とにかく面白くて、心地がよかった。心地はよかったのだが、ただ・・・。
『ただ・・・、香水はまだ、私には早いや♪』
帰り道、私は、ハンドルをしっかりと握ってはそう思った。それでいいと頷いた。
しかし、『でも、待てよ・・。』と急に、心の中で、何かがもやっとする。
『そういえばあの中で一番モリ先輩が、吸い込まれるような顔をしていたなぁ・・。』
私は、バックミラーをちらりと見た。
再び、車を走らせてから、数分は経過している。先輩が映っているはずがない。
諸岡さんと共に先輩は、菱田家に残っていた。

数週間後、久しぶりに先輩宅に遊びにいった私は、いつになく奇妙な感覚を味わうことになる。
突然、先輩は、私に見慣れない綺麗な名詞を差し出した。
名詞には、“パフュームサブアドバイザー、森山爽子”と、記載されていたので驚いて、思わず、
「えっ?先輩、塾の講師、辞めちゃったの?」と尋ねた。そこで先輩は、まさかと微笑む。
「これはね、副業なの。」
「ホラ、先日の諸岡さん・・・覚えてる?
彼女がね、森山さんは見込みがあるから、一緒に活動をしないかってね。」

そう言うや否や先輩は立ち上がり、サイドテーブル上のキルトをすらりと外した。
するとその下からは色とりどりの、それはそれは、綺麗な小瓶群が顔を出したのだ。
小瓶たちは全て見覚えのある形や、マーク、その他、いくつかの特徴を所持していた。
私が、その中のいくつかを試したことがあったのは言うまでもない。
< 7 / 40 >

この作品をシェア

pagetop