後向きの向日葵
私の戸惑いを他所にして――正確には気づかない様子で、――、ここで、モリ先輩は演説を始める。
「ビジネスの始まりとしてね。うふふー♪
私、ついに買っちゃったぁ~~。」
「まずは商品の売り手となる私が、知らなくっちゃいけないのよ~!」
先輩はとても上機嫌な様子で、演説の雰囲気はかわいく、何となくは聞くに堪える範囲のものだ。
この気分にある人を害するのは、いささか野暮というものでもあった。
そうであるにも関わらず、それにしたって、それにしたってなんだ!!
小瓶の量についてはさすがに、微妙な動揺を覚えた私がいた。

ただ、商品自体に張りぼてな感じはしない。
私には、同時にまんざらいい加減な商品ではないという感触もあった。
私には、先輩を引き止める決定的な理由はなく、また、私は、青年期という時期にはそぐわないと思われた、慎重な側の自分を自重してしまう時期にあった。
極力、頭のスイッチをポジティブシンキングに切り替えるべく、私は、自分に働きかけて、「先輩にとってこれはこれで、いい仕事になるといいな。」と思うことにした。

私は、あの日を境にモリ先輩の装いや雰囲気が、本格的に、変わっていったことをよく覚えている。
鎧と呼ばれてしまう側のそれに向かい、化粧や、ファッションが着実に移行していったのだ。
当然、変わらなかったものもある。外見は違っても、中身は先輩だった。
先輩は相変わらずに幅広く、思いを開示してくれていた。
そして、これには先輩の始めたビジネスの、仕組みの説明も充分に含まれていた。
何でも、このビジネスにおいては商品の販売はさることながら、もう一つの、大切な要素があると言うのだ。
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