後向きの向日葵

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それが、“販売員増加”の項目だった。
どうも、新たなる販売員獲得の数によっては、彼を引き入れた、古参の販売員を昇格させるといった、格付けの制度があるということらしい。
そして、この昇格と呼ばれるものについては、実に、様々なメリットが盛り込まれていた。
中でも重要な要素が、“報酬の獲得”である。
先輩の話によれば、自分の下に人材がいればいる程に何にもしなくても、当の販売員には収入増加が見込まれる制度であると言う。

モリ先輩はまさに、これを夢見ていた。
彼女はマンネリ化した達成感や疲労感を、本業に覚えていた頃合にもあったのだ。
そうした最中、人脈についてはちょっとした、自信を持っていたのだろう。
確かに先輩の周りには、昔から人が尽きなかった。度々、リーダーを担う人だった。
このあたりのデータを慎重に総合して考えてみれば、先輩が、「これはいける！」と思ってしまったことは想像に難くなかった。まだ、この時には、情報が揃っていなかったのだが・・・。

他方、そこにはノルマもあった。
ノルマを達成できない場合は、定期的に商品を自ら、購入しなければならなかった。
決して、一度に破産を体験する額ではないのだが、販売員は、販売員であると同時に消費者でもあった。しかし、そんな負担も、昇り詰めるまでのことだ！
少しの間、自分たちがそうであるかもしれないが、いずれ、自分よりも格下にあたる、販売員たちの活動如何によって、安定した収入が得られるようになるだろう・・・。
そして、それを達成するということは、ネットワークの賜物でもあるのだ。
そこには王様ではないにしても、人望が絡み、自ずと地位もついてくることだろう。

先輩の気分を見ていると確かに、魅力的な生活ではあると思った。
慎重で奥手な私以上に、納得した人は多かった。