悲恋~歌姫HARUHI~
「大丈夫だよ、春妃・・・。
春妃は歌が好きなんだろう?
あとは、信じるしかない。
坂本くんは凄腕だから、今は
彼にまかせて堂々とデビューしなさい。」



ヒロは私の背中を優しくたたいた。



「春妃、顔をあげなさい。」

顔をあげたら
愛する人の顔だけが映る。


「夢をつかむチャンスはそこにあるよ。
堂々とまっすぐ前を向いて
春妃ならできる、明るく元気で
周りに気を配りながら・・・・
いつも感謝の気持ちを忘れてはいけないよ。」



「はい。
おじさま・・・。」


私の肩は小刻みに震えていた。

なぜ震えているの?
デビューが怖いんじゃない……

そう言いながら
あなたを求めるために手段を選ばない
本当の私が怖いから……


「おじさま、なぜ私は震えているのかしら。」


「きっと緊張感だよ。
大丈夫、うまくいくよ。」


違うよ・・・ヒロ・・・
緊張なんかあなたへの想いに比べれば
ほんのちょっとだけ……


「お願いがあります。少しだけ
抱きしめてください・・・・・・。」


今ならきっとこのわがままも
聞いてもらえる…私は確信していた。



「おじさまがだっこしてくれたら
安心するの。」


躊躇していたヒロの胸に素早く
飛び込んだ。


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