黒猫眠り姫〔上〕[完]

明るく賑わう町の隅、罪悪感がなくなることなんて

なかった。

ネオンは何も知らずに輝き続ける。

泣けない私はどこまでも可愛くなかった。

「あのさ、あんた悪くないんじゃない?」

その声に驚いた。あの最低な自分が見られていた

ことに衝撃的なショックを感じた。

振り返ると、黒い髪の黒い瞳のクールな感じの

かっこいい男の人がいた。

「・・・・・・・・・・・・・」

「今の自分が悪いと思ってるでしょう?」

「・・・・・・・・・・・・・」

「今の状況で正しいこと言ったのはあんたでしょ。」

「・・・・・・・・・・・・・」

「感情的になったのは向こうだよ。」

「・・でも・・・・・」

「逃げるの?」

自分の弱さを見通されているような気がして

怖くなった。

「何も知らないのに知ったことのように言わないで。」

やっと言葉に出せたその言葉は最低な言葉だった。

「あんたは、俺の知ってるやつに似てる。」

「・・・・・・・・・・・・」

「なんで、そんな冷めた目してるの?」

手を差し伸べられた。

「・・さわらないで。お酒くさいからほっといて。」

「別に気にしないから。」

「・・・・優しくしないで。」

「何で?」

「そんな資格ないから。」

震えた声が喉から出た。

絞り出すように言った言葉は、精一杯の強がりだった。

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