黒猫眠り姫〔上〕[完]

そんなの駄目なのに。

そう思っても、信じることが怖くて仕方なかった。

突き放されたときの痛みほど怖いものはない。

その感覚が、全てを麻痺させるかのように、

体が酷く拒絶する。

だから、臆病で逃げることで自分を守ることしか

出来ない。

「たださぁ、わからなくもないよあんたが怖い

って思うほど、相手は不安になるんじゃないの?」

「わかってるよ。でも、動かない。」

「深呼吸してみ。」

「うん。」

すーっと空気を吸い込む。

タバコの匂いが混じった空気は苦い。

「後は、あんた次第。あんたが、信じらんなきゃ

ずっと変わらないよ?少しでも信じてみれば。」

「っうん。信じたい。」

手を強く引かれた。

地面から離された脚。

息苦しくて考えることも拒絶してた頭。

事実は変わらない。

この姿を見たら、きっと桐は悲しむ。

その事実を受け入れてもらえなくても、

攻めることなんてしないから。

悪いのは、全部私だから。

どんなに慰められても、もう聞えない。

掛けられた言葉は忘れない。

でも、私はそこまで強くない。

弱くて臆病者だから。

だから、悲しいって寂しいって

言ってみたくなったんだよ。
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