黒猫眠り姫〔上〕[完]
「何言ってんだ。鈴は、ここに戻ってきた
じゃん。」
「違うよ。ここに戻れなかった私を、
正しく言うこの人がいなかったら、ここに、
戻ることなんてしなかったよ。」
「・・・とりあいずさぁ、2階に行って、
桐に服借りて、お風呂に入ってきな。」
「ああ。そうしろ。酒くせーしな。」
「・・ありがとぅ。」
「湊、上行って適当に鈴に服貸してやって
いいから。鈴連れてけ。店は、今日そろそろ
閉めるから。」
もう夜中の12時過ぎたころだった。
「うん。じゃ、鈴行こう?」
「・・・・・・」
言葉の変わりにこくんと頭を振った。
鈴を2階に連れて行く。
相変わらず汚いようで、整頓された部屋。
桐の住んでいる所である2階に到着すると、
鈴をお風呂場に連れて行く。
「お湯はここね。・・大丈夫?」
「・・うん。ありがとう。」
「今、服持って来るね。」
「・・・・うん。」
「鈴。」
そう言ったら、ビクンと体を小刻みに
動かして伏せた。
「・・湊。」
その声が、酷く悲しみに溢れて聞えた。