黒猫眠り姫〔上〕[完]
「・・どうしたの?」
「・・・私のこと嫌いになっていいからね。
やさ・・優しくされ・・る資格・・ないから。」
「何言ってるの?」
「・・さ、最低なんだよ。・・私は、っ・・
最低な人間・・なんだ・・・よ。」
「鈴が最低なわ」
「思い知った。」
「えっ?」
「桐を守ること出来なくてそのくせ、人を
傷つけた。」
「・・鈴。」
「甘えることなんて許されない。私は、湊や桐
尚から逃げようとしたんだよ。」
「・・・・・・」
「怖かった。信じれないほど、自分が嫌いなの。」
「・・俺は、好きだよ。」
「・・・・・・」
「鈴のこと嫌いなんてあの二人も思ってないよ。」
「信じたかった。苦しいぐらい大切なの。・・
みんなが、信じてくれてる頃、葛藤した。
大切な人ほど、突き放されたときの痛みは、
果てしなく辛くて苦しくて切ないんだって。」
「鈴。」
白いシャツがお酒で色が茶色くなっている。
鈴の肌の白が赤く染まって痛そうな頬。
鈴の苦しそうな顔は残酷なほど、
綺麗過ぎて、どうしたらいいのか
わからなくてただ、名前を呼んでいる
ことで、存在を確かめた。