黒猫眠り姫〔上〕[完]
少しした頃、鈴はお風呂に入ると言って、
涙を振り払ってお風呂場に姿を消した。
裾に染みたお酒の匂いが何とも言えない。
リビングにあるソファーに腰を下ろす。
ぼーっと天井を眺めた。
知らないうちに、桐がソファーに座って
聞いてきた。
「鈴は?」
「今はお風呂。」
「様子は?」
「すごく責めてるよ。」
「・・・・・・・・・」
「自分が悪いって何度も。」
「俺さぁ、聞いたよ。満に一部始終。」
「そっか。仕事は?」
「ああ。今、満と尚に掃除やら頼んでる。」
「そう。」
「俺、鈴に・・・わ」
「桐が、自分を責めると鈴が悲しむよ。
桐を追い詰めちゃったって言って、
辛くなるよ。」
「辛かったよな。鈴、苦しかったよな。
何であの時トイレついてやらなかったんだろう。
そうすれば、あの女から鈴は守れたのに。」
「桐が自分を責めても仕方ないよ。」
「そうだけど。鈴が、悲しんでる顔させたく
なかった。鈴は、何にも関係ないのに、酷い
ことまた言われたんだろうな。」
「鈴は、自分がどんなに言われても黙ってる子
だよ。でも、きっとどこかでその酷い言葉を、
溜め込んでいるのかもしれないね。」
「鈴は、優しすぎるんだよ。自分には、厳しく
てこれじゃぁいつか鈴が・・」