黒猫眠り姫〔上〕[完]
「鈴を見放さないでやって。
それが一番、鈴が怖がってることだから。」
「当たり前だろ。」
「きっと、見放されたことがあるんだよ。
だから、俺や桐、尚に突き放されたらって
思うと怖いんだよ。」
「・・・鈴。」
「桐が、鈴にそれを言ってあげればきっと、
いつものように戻ってくれるよ。」
「湊は?」
「・・言ってないよ。」
「お前が一番に言ってやらないでどうすんだよ。」
「鈴の痛みが怖いぐらい分かるんだ。」
「湊。」
「臆病で今よりもずっと人を信じられなかった頃
の自分に似てる。」
「だったら、一番にわかってやれるだろ。」
「・・そうだね。」
「傍から離れるなよ。お前が鈴を守ってやれ。
俺だってもちろん守るけど、一番信用してる
のは、湊お前だろ。」
「うん。守るよ。傷ついたならずっと一緒に
いてあげたい。鈴が傍にいてくれたように。」
「じゃ、俺、下見てくるわ。
鈴もお前も今日は泊まっていけ。尚と満も
いるけど、鈴の口から聞いてやらないとな。」
「うん。ありがとう。」
「ふっは。湊が俺にお礼した。」
「殴っていい?」
「いいや。やめてくれー。」
そう言って階段に向かって降りていった。
静かなリビングに戻った。
自然とぼーっとまた天井を眺める。
鈴と自分を重ねてしまう。