黒猫眠り姫〔上〕[完]
あの頃の自分ほど最低で嫌いな自分はない。
だから、鈴が思う気持ちもなんだか分かる。
苦しくて、助けも言えないのは自分が、
臆病者だったから。
それだから、鈴にはそんな風に思うことが
当然だと思わせたくなかった。
それで辛いのは、自分なんだと知っている
から、誰かに頼ることも強くなれること
なんだって信じて欲しかった。
「・・湊。」
「あっ、出たんだ。」
「うん。」
「鈴。」
「何?」
「俺はさぁ、信用してもらえないのかな?」
息が詰まるような心がギシギシと波打つ
ように締め付けられた。
「・・湊?」
「鈴に自分を責めて欲しくないんだ。
もっと、自分に諦めないで欲しい。
鈴は一番に自分を否定してる。」
「・・・・ほんとはね、」
「うん。」
「きっと、苦しいの。だけど、そんな
思いするのは、自分だけでいい。」
「鈴。」
「そうやって今まで生きてきたんだよ。」
「うん。」
「だから、苦しくもなんともない。」
「鈴。」
「・・・湊っ。」
「うん?」
「何でか分んないけど、苦しい。」