黒猫眠り姫〔上〕[完]

「鈴が、ホントは辛いからだよ。」

「自分の心まで無視して、苦しいわけない。」

「何でも溜め込んでいいわけない。

そんな思い鈴は知らなくていい。」

「・・湊?」

「鈴には、もっと誰かに頼って欲しい。

誰も鈴を突き放したりしないよ。

誰も鈴を責めたりしないよ。誰も鈴を否定する

人なんていないよ。誰も鈴が、苦しんでいい

なんて思わない。人を怖がらないで。

自分を信じて、甘えることに臆病に

ならなくていいんだよ。」

伝えたいことをとにかくしゃべった。

伝わってるかなんてわからない。

でも、一人だった俺の傍にいてくれた

のは、鈴だった。

もう、誰も信じられなかった俺の前に

現れて同じように苦しんでいる鈴に

一緒に居てあげたいと思った。

俺が、そうして欲しかったように。

「・・湊っ。」

「うん?」

いきなりふわっと体が温まる。

鈴の匂いがふわふわして、

鈴の華奢の体が細くて、

理性なんてきっと壊れてしまいそう

なほど、鈴をただ抱きしめ返した。

鈴の細くて折れてしまいそうな腕が、

背中に回る。




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