黒猫眠り姫〔上〕[完]

「鈴は、鈴らしく生きれば良いってことだよね。」

「私らしく?」

「そう鈴らしく。」

「私らしいってどういうことなのかな?」

「鈴が思っていることを相手に伝えるとか

なんじゃないかな?」

「でも、それじゃ、私がその人に押し付けてる

みたいな?」

「何で?伝えることによって解決できること

が世の中には多いと思うけどな。」

「そういうものなのかな?」

「それは、これから知ればいいよ。」

「そうだね。」

「湊。ありがとうね。見捨てないで、

悲しいときに辛いときに居てくれて、

正しいこと教えてくれて。」

「そんなの、当たり前だよ。」

鈴が見つめてくるから照れ隠しに

ぎゅっと抱きしめた後、

離れて二人で笑いあった。

たぶんこの時鈴が見せた笑顔が、

初めて俺に見せた鈴の笑った顔だった。

「あっ、可愛い。」

「うん?」

「鈴って笑うと可愛い。」

「・・・・湊ってからかいすぎ。」

「からかってないけどな。」

「ん?何?」

「ううん。何でもないよ。」

「ホントに?」

「ふはは。鈴ってば、剥きになりすぎ。」

「そうかな?」

「ふはは。」
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