黒猫眠り姫〔上〕[完]
「おお。早く寝に行けよ。」
「うん。」
「おやすみ。」
「うん。」
バタンっと閉まったドアが耳に残る。
鈴が電気をつけて待っていた。
「あっ、ごめんね。さっきに、寝てて
よかったのに。」
「ううん。いいの。」
「そう?」
「うん。」
「じゃ、寝ようか?」
「うん。」
布団の中は、すでに暖かかった。
「鈴。おやすみ。」
「湊おやすみ。」
そう言うと鈴は安心したように眠った。
まるで、ほんとの眠り姫のように。
ふわっとした鈴の匂いが心地よかった。
猫毛の柔らかい鈴の髪が肩に掛かった。
今日は何だかさっきまでの眠気も
ぶっ飛んでしまうほど鈴を身近に
感じた。
ー湊以外の男性軍の話ー
「なぁなぁ、鈴と湊同じ部屋行ったよ?」
と満が声を抑え気味に言う。
「あーいいの。湊と鈴いつも一緒に寝てる
っぽいから。」
と自然なことだと言うように桐が言った。
「えー。そんな平気っすか。」
と冷めたまなざしで尚が言った。
「大丈夫なんじゃない。」
「鈴の鈍感さで湊が壊れないか心配。」
「言えてる。」
「まぁ、湊はそんな男ではないさ。」
「桐よく言えたもんだな。」