黒猫眠り姫〔上〕[完]

「湊ーこっちだ。」

「あっ、遅いよ。」

その一瞬から女達が振り返る。

『かっこいい』や『もう一人の人も』

などと騒いでいる。

騒がられて居る彼らは全てを気にしてない様子。

そこで、二人の真ん中にいる私に

視線が飛び交う。

これぐらいの視線なら全然気にならない。

学校でもよくあることだから。

でも、湊は気づいてくれた。桐も。

「行こう。」

そう言って手を引かれる。

右手に湊。左手に桐。

さすがに、それを見た女達は、

もう姿を消していた。

「二人とも、かっこいいとは思ってたけど、

ここまでだとは思わなかった。あんまり、

一緒に歩きたくないタイプかも。」

「はは。そう言われたのは始めてかな。」

湊にはつぼだったのか笑う。

「俺も。今までとは全く違うタイプなのは、

鈴だな。普通は、あの視線に耐えられないだろ。」

「そう?学校ではいつもあんな感じだよ。」

「何それ?あんなのを毎日?」

「うん。慣れって怖いね。」

「おいっ。随分と気楽に考えてるな。」

「だって、そうしなきゃやっていけないよ。」

「そっか。」

近くにあったファミレスに入る。

三人席でついた席に腰を下ろす。

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