黒猫眠り姫〔上〕[完]

何だかお昼下がりの午後はもっと楽しく

なりそうだ。

よくよく考えて見ると、あんまり家を

出ることはなかったし、こんな風に、

会話を弾ませられるのは、やっぱり

嬉しかった。

「鈴って笑うともっと可愛いのな。」

「はは。可愛いよ。どんな鈴でも。

でも、笑ってくれるのは限られてる

人なんでしょ?」

鋭いことを言う湊は、やっぱり

分かってくれている。

「まだ、うまく笑えないよ。」

「うまく笑おうなんて思わなくて

いいんだよ。ただ、笑いたいときに

笑えば。」

と話す湊はやっぱりニコッと笑っていた。

「可愛くないよ。お世辞は言わなくて

いいからね。でも、湊と桐と一緒に

いると自然と笑える。」

「お世辞なんて言ってないけど?」

湊は、当然のごとく言う。

「俺もお世辞言えないけど?」

桐もニコッと笑って言った。

「二人ともからかってない?」

「鈴ってほんと鈍感なのな。」

「鈍感?何で?」

「はーもういいよ。笑ってくれれば。」

「今自分かっこいいこと言ったと

思ったでしょ?」

そう聞くと、ふんっと言った。

「鈴って毒舌酷いのな。」

「桐って幼稚だね。」

「何を!!」

「桐うるさいよ。」

喧嘩が始まりそうなのを止めたのは

ゆっくり水を飲んでいる湊だった。
< 149 / 344 >

この作品をシェア

pagetop